渋沢栄一翁の子孫であります渋澤健(しぶさわ けん)さんから送っていただく「渋澤レター」が、私の考え方の一つのヒントになっていることを、このブログでも時々紹介させていただいております。先日、送られてきた「渋澤レター」には、2020年に向かっての考え方について触れられていました。

1964年に日本で開催された東京オリンピックは、その後の時代の象徴になったことは言うまでもありません。様々な社会インフラが整備され、日本の経済成長を支え、「Made in Japan」が世界のブランドとなり、日本は繁栄の時代を迎えることができたと渋澤さんも言っておられます。

しかし、現在はもはや「Made in Japan」で今後の繁栄を描くことはできません。輸出大国というモデルで日本が栄えることには限界が来ています。かつて、日本が「世界の工場」と言われた時代は、神戸港、横浜港、東京港のコンテナ取扱個数は、いずれも世界ランキングベスト20の中に入っていました。しかし、現在は見る影もありません。東京港が29位で、横浜港は54位、神戸港は57位です。

では、「Made by Japan」。日本によって作られることが高く評価される、そういう時代かというと、そうでもありません。日本のブランドが世界で評価を得ていることは事実ですが、分野によっては中国や韓国などとの競合が多く「Made by」だけでは特徴が出しにくくなっていると指摘されています。

そこで渋澤さんは、「Made with Japan」。これが2020年から再び日本が繁栄の時代を迎えるための大切な心得であり、国家戦略でないかと言っておられます。渋澤さんは、例えば日本人のモノづくりの「匠(たくみ)の技」を用いて、現地の国の人材や素材を活用して「共創」する(共に創る)こと、これが「Made with Japan」の概念と説明しています。

2020年の東京オリンピックでも、日本が世界を「おもてなし」するだけでは不十分だそうです。「おもてなし」ということは、相手をお客様扱いするということになります。つまり他人だということです。パートナーではありませんと。一方、2020年東京オリンピックが「Made with Japan」というメッセージをしっかりと世界に伝え、時代の象徴になれば、日本の将来は明るいと言っておられます。

世界が自国第一主義の時代に突入しても、「Made with Japan」であれば、世界の国々にとって日本は自国を脅かす存在ではなく、「共創」するパートナーであるという立場を持つと述べられています。

確かに「Made with Japan」は、大きなヒントになる概念かもしれません。国と国との間に必要なのは、橋を架けることであって、壁を作ることではありません。特に、社会の分断が進み自己利益中心の世界になってきている昨今、あえて日本はその反対の概念を行くというのは、日本の国家戦略としても、また先進国が果たすべき責任という面からも、大事なことかもしれません。